湿疹
皮膚科を受診する病気の中で多くを占めるのが湿疹です。湿疹は皮膚に炎症を起こす病気の総称ですので湿疹と皮膚炎はほぼ同じ意味の病気です。炎症が起こるわけですので何らかの原因があるのですが、多くは原因がはっきりせず、そのような場合に湿疹と表現することが多いようです。原因がある程度特定できたものを皮膚炎と呼び、原因によって呼び名が変わります。また、湿疹は、原因が不明なことが多いのでその見た目や形によって分類されることが多いです。
初期症状が湿疹とよく似たかゆみから始まる帯状疱疹もありますので、かゆみが痛みに変化する様な兆候があれば急いで皮膚科を受診した方が良いかもしれません。
◎主な湿疹や皮膚炎は以下の様なものがあります。
・手湿疹(主婦湿疹)
手にできる皮膚炎で主婦や料理人、美容師など水仕事を多く行う方に起こりやすい湿疹です。水に多く触れることによる温度刺激や皮脂への影響、洗剤やシャンプーなどの化学物質による刺激やアレルギー、水をあまり使わない人でもゴム手袋のゴムなど特定の物質へ触れる機会が多い場合にも起こります。
同じような症状が手にできる病気には原因や治療方針の異なる掌蹠膿疱症、手水虫(白癬)、汗疱がありますので皮膚科での鑑別診断が必要となります。
・貨幣状湿疹
冬場にやや多いので皮膚の乾燥が関与していると言われていますが、金属アレルギーによるものの場合もあります。はっきりとした原因が分からないことも多いです。形状はコインのような丸い形をしており、下肢の発症が多いが、おなかや背中など体幹や腕にもできます。強いかゆみで掻き壊すといった新たな刺激によって悪化させることがあります。保湿クリームなどの適切なスキンケアや塗り薬による治療を行います。
・皮脂欠乏性湿疹
老化や洗い過ぎなどの原因により皮膚表面の皮脂が減りガサガサとした見た目になり白く粉を吹いたような状態となることで起こります。皮膚の角質が乾燥で剥がれ落ちひび割れができ、痛みやかゆみが発生します。そうなると皮膚のバリア機能が低下し普段は角質層で守られ奥へは浸透しない物質が入り込みやすくなります。そのような状態となると、使い慣れた化粧品でも新たな刺激となり炎症を起こしたり、かゆみを感じる神経線維が皮膚表面まで伸びて来ることにより髪の毛や衣類で擦れる様なわずかに刺激でもかゆみを感じ皮膚を掻き壊すことにより一層の悪化が進みます。
・接触性皮膚炎(かぶれ)
何らか原因となる物質が皮膚に触れることで起こる皮膚炎です。一般的にかぶれと呼ばれています。原因物質が、直接皮膚に刺激となることで起こる場合と、皮膚刺激にはなっていないが体のアレルギー反応による皮膚炎の場合もあります。
直接的な刺激としては、油や殺虫剤や農薬薬といった化学薬品、おむつかぶれの原因の一つであるアンモニアによる刺激などがあります。アレルギーによるものとは異なり誰にでも刺激となりますのでかぶれます。対してアレルギーによる皮膚炎はアクセサリーによる金属アレルギーや漆かぶれのような植物の汁が皮膚に付着したことによるもの、スギ花粉による皮膚症状、化粧品やシャンプーなどの日用品で起こる場合などがあります。原因となるものを特定し原因物質に触れないようにすることが重要で、アレルギーによるものの疑いがあれば原因物質特定の為にパッチテストや血液検査を行うことがあります。
・脂漏性皮膚炎
皮脂の分泌が盛んな頭や顔に起こりやすく新生児期から乳児期にみられる「乳児型」と、思春期以降の成人にみられる「成人型」があります。
症状としては黄色いうろこ状のふけのようなものが皮膚に付着し、皮膚炎をおこします。かゆみを伴わない場合もあります。また、長期間続くフケの症状として悩まれている方もおられます。生後3か月ごろの乳児の顔や頭皮のほか皮脂の分泌の盛んな思春期や40~60代の顔や頭、背中、腋、股などの毛の生える部位が好発部位です。
原因の一つに皮膚の常在菌である「マラセチア」という真菌が関与していると考えられていますが詳しい発生条件は分かっていません。ストレスや冬の乾燥などによっても症状が増悪することがあり、成人の場合は慢性的な経過をたどることもしばしばあります。
皮脂の多い部位で発症する傾向にあるので洗顔や洗髪を適切に行う事や真菌が関与していることからも蒸れやすい環境には注意し洗髪後は速やかに乾燥をするなど日常的なケアが大切です。毛の生えている部位はステロイド入りのローションやカビに効く成分の乳液などで治療を行います。