水虫

 水虫はカビの一種である白癬菌が人の体に感染することで起こります。水虫をそのままにしておくと徐々にほかの部位に症状が広がるだけでなく、家族など他人に感染させてしまうこともあります。そのようなことを防ぐためにも、早めの治療が肝心です。
 一般的によく見られる足の水虫は、バスマットの共有や蒸れやすい環境で感染が広がりやすくなります。白癬菌が皮膚に付着し、内部に入り込むためには24時間以上かかるといわれています。こまめに洗うなど皮膚を清潔にすることやバスマットやタオルの共有を避ける、床の清掃、通気性の良い靴を使用するなどして治療が終了するまで気を抜かずに家族間の感染を防ぎましょう。

◎感染しやすい部位には以下の部位があります。
・足(足白癬)
 かかとや指の間のほか、足底から足のフチにかけて広範囲で見られます。ジュクジュクした浸潤タイプと、皮膚がむけて赤くなる乾燥タイプとがあります。

・爪(爪白癬)
 足の水虫が原因で起こることが多く、爪の先が白くにごって爪の付け根にも広がるタイプや、爪の真ん中にできた傷から感染して広がるタイプ、爪の付け根から広がるタイプがあります。爪がもろくボロボロになり、分厚くなって通常の爪切りで切れなくなることもあります。

 その他にも頭皮や顔、おなかや背中などの体幹、鼠径部に感染し、かゆみを生じることもあります。

 基本的な治療は外用薬を塗って治療します。ただし、爪の水虫など外用薬では効きにくい場合は内服薬で治療します。また、手湿疹や掌蹠膿疱症汗疱など水虫とよく似た症状を呈する皮膚の病気が多数あります。これらは水虫とは治療方法が異なりますので市販の水虫の外用薬で悪化させて来院される場合も少なくありません。クリニックでは皮膚組織を顕微鏡で見て白癬菌の有無を目視で確認し診断・治療を行います。

湿疹

 皮膚科を受診する病気の中で多くを占めるのが湿疹です。湿疹は皮膚に炎症を起こす病気の総称ですので湿疹と皮膚炎はほぼ同じ意味の病気です。炎症が起こるので何らかの原因があるのですが、多くは原因がはっきりせず、そのような場合に湿疹と表現することが多いようです。原因がある程度特定できたものを皮膚炎と呼び、原因によって呼び名が変わります。また、湿疹は、原因が不明なことが多いのでその見た目や形によって分類されることが多いです。
 初期症状が湿疹とよく似たかゆみから始まる帯状疱疹もありますので、かゆみが痛みに変化する様な兆候があれば急いで皮膚科を受診することをお勧めします。

◎主な湿疹や皮膚炎は以下の様なものがあります。
・手湿疹(主婦湿疹)
 手にできる皮膚炎で主婦や料理人、美容師など水仕事を多く行う方に起こりやすい湿疹です。水に多く触れることによる温度刺激や皮脂への影響、洗剤やシャンプーなどの化学物質による刺激やアレルギー、水をあまり使わない人でもゴム手袋のゴムなど特定の物質へ触れる機会が多い場合にも起こります。
 同じような症状が手にできる病気には原因や治療方法の異なる掌蹠膿疱症、手水虫(白癬)、汗疱がありますので皮膚科での鑑別診断が必要となります。

・貨幣状湿疹
 冬場にやや多いので皮膚の乾燥が関与していると言われていますが、金属アレルギーによるものの場合もあります。はっきりとした原因が分からないことも多いです。形状はコインのような丸い形をしており、下肢の発症が多いものの、おなかや背中、腕にもできます。強いかゆみで掻き壊すといった新たな刺激によって悪化させることがあります。保湿クリームなどの適切なスキンケアや塗り薬による治療を行います。

・皮脂欠乏性湿疹
 老化や洗い過ぎなどの原因で皮膚表面の皮脂が減りガサガサとした見た目の白く粉を吹いたような状態となることで起こります。皮膚の角質が乾燥で剥がれ落ちひび割れができ、痛みやかゆみが発生します。そうなると皮膚のバリア機能が低下し普段は角質層で守られ奥へは浸透しない物質が入り込みやすくなります。そのような状態になると、使い慣れた化粧品でも新たな刺激となり炎症を起こしたり、かゆみを感じる神経線維が皮膚表面まで伸びて来ることにより髪の毛や衣類で擦れる様なわずかな刺激でもかゆみを感じるようになります。それがさらに皮膚を掻き壊す原因となり一層の悪化が進むことも少なくありません。入浴時間や刺激の少ない石鹸の検討や洗体の見直しなど生活面での注意や保湿クリームなどの適切なスキンケアや塗り薬による治療を行います。

・接触性皮膚炎(かぶれ)
 何らかの原因となる物質が皮膚に触れることで起こる皮膚炎です。一般的にかぶれと呼ばれています。原因物質が、直接皮膚に刺激となることで起こる場合と、体のアレルギー反応を起こす物質が皮膚に触れることによる皮膚炎の場合もあります。
直接的な刺激としては、油や殺虫剤や農薬といった化学薬品、おむつかぶれの原因の一つであるアンモニアによる刺激もこれにあたります。アレルギーによるものとは異なり誰にでも刺激となりますのでかぶれをおこします。対してアレルギーによる皮膚炎はアクセサリーによる金属アレルギーや漆かぶれのような植物の汁が皮膚に付着したことによるもの、スギ花粉による皮膚症状、化粧品やシャンプーなどの日用品で起こる場合などがあります。原因物質に触れないようにすることが重要で、原因物質を特定するために日用品やアクセサリーなどの確認や血液検査を行うこともあります。

・脂漏性皮膚炎
 皮脂の分泌が盛んな頭や顔に起こりやすく新生児期から乳児期にみられる「乳児型」と、思春期以降の成人にみられる「成人型」があります。
 黄色いうろこ状のふけのようなものが皮膚に付着し、皮膚炎をおこします。かゆみを伴わない場合もあります。なかには、長期間続くフケの症状として悩まれている方もおられます。生後3か月ごろの乳児の顔や頭皮のほか皮脂の分泌の盛んな思春期や40~60代の顔や頭、背中、腋、股などの毛の生える部位が好発部位です。
 原因の一つに皮膚の常在菌である「マラセチア」という真菌が関与していると考えられています。ストレスや冬の乾燥などによっても症状が増悪することがあり、成人の場合は慢性的な経過をたどることもしばしばあります。その他アトピー性皮膚炎や別の種類のカビによって起きるカンジダ症など、似たような皮膚症状を呈する病気がいくつかあります。これらの見分けは難しく、皮膚科での鑑別診断とそれぞれの病気に応じた専門の治療が必要です。
 皮脂の多い部位で発症する傾向にあるので洗顔や洗髪を適切に行う事や真菌が関与していることからも蒸れやすい環境には注意し洗髪後は速やかに乾燥をするなど日常的なケアが大切です。毛の生えている部位はステロイド入りのローションやカビに効く成分の外用液などで治療を行います。

とびひ

 虫刺されやあせもなどを掻きこわした傷に黄色ブドウ球菌や溶連菌などが感染し、かゆみを伴った水ぶくれやかさぶたが発生します。更にはそれを搔き壊すことにより起こるびらんが主な症状です。患部の分泌液が別の部位に付着することで病変があちこちと広がることが特徴的な子供に多い病気です。
 溶連菌が原因の場合は、のどの痛みや発熱を伴う場合もあります。患部を優しく丹念に洗い清潔に保つこと、タオルの共有はしないこと、爪を短く切り虫よけなどで虫刺されを予防することが日常のケアとして重要です。
 まれな事ではありますが、高熱、皮膚の強い赤みや痛みなどがみられる「ブドウ球菌性熱傷様皮膚症候群」に進展することがあり、症状がひどい場合や自宅でのスキンケアで改善が見られない場合は早期に皮膚科を受診し治療を行う事をお勧めします。

赤ちゃんの湿疹、かぶれ

 生後3か月ぐらいまでの赤ちゃんは、頭や顔の皮脂分泌が多く皮膚の新陳代謝が活発です。そのため、この時期に特有の湿疹、皮膚炎の一種である脂漏性皮膚炎がよく起こります。症状の特徴は頭や顔に黄色いかさぶたのようなフケの発生です。皮脂の分泌が盛んなために起こった症状ですので、石鹸で清潔に洗うことが改善のためのスキンケアとして大切です。そのほかの部位でも耳の後ろ、首回り、わきの下の洗い残しにも注意が必要です。
 また、便や尿の刺激でかぶれるおむつかぶれもよく見られます。赤いブツブツやただれが生じ、痒みや痛みを伴います。患部をよく洗うことや保湿剤を塗ることで改善しますが改善が見られない場合やひどい場合は皮膚科受診をお勧めします。

ニキビ

 にきびは多くの方が思春期に経験するごくありふれた疾患です。女性は12~13歳頃、男性は13~14歳ごろからニキビができはじめ、17~19歳頃にピークを迎えます。ある程度年齢が上がるとできなくなるのが通常の経過です。また好発部位が顔面を中心に背中や胸のような外から見える場所であるために、症状を悪化させず回復困難なニキビ跡を作らないことが重要な治療目的です。
 毛穴についている皮脂腺から皮脂の分泌が増えることや毛穴が詰まりやすくなり皮脂の排出がうまく行われないなどが原因で毛穴にたまった皮脂の中でニキビ菌が繁殖し赤く膿んだニキビとなります。
 思春期を過ぎると症状が落ち着き消失しますが、20代以降30代でできる大人のニキビもあります。口周りやあご、首回りを中心にできることが多いです。
 治療は、炎症を抑える作用のある薬や感染を鎮めるための抗生物質の内服や皮脂の詰まりを改善する外用薬で治療をおこないます。また、当院では、皮膚の状態を確認させていただいたうえで、ご自宅で実施頂けるケミカルピーリング剤のご紹介や日常のセルフケアとしてご使用いただけるニキビ肌にも影響の少ない化粧品をご購入いただくことも可能です。これらは、皮脂つまりの改善や予防に対して有効な方法です。

いぼ

・いぼ(尋常性疣贅:じんじょうせいゆうぜい)
 皮膚の一部が盛り上がった小さなできもので「ヒトパピローマウイルス」というウイルスが、皮膚の小さなキズから感染することで発症します。痛みなどの自覚症状はほとんどありません。
 特に、かゆみを伴ったアトピー性皮膚炎の子供は、皮膚に引っ掻き傷ができやすく、ここからウイルスが入り込み感染しやすい状態となりますので注意が必要です。
 このウイルスの感染力は強くないですが、イボの発生している部位と頻繁に触れる隣あった健康な部位に感染が広がり、多発することがあります。
 治療は、液体窒素で凍らせて除去する凍結凝固療法が一般的です。また、当院ではモノクロロ酢酸を使用し、いぼの組織を腐食・壊死させる治療も行っております。この方法は、痛みも無く皮膚科学会の尋常性疣贅診療ガイドラインにも記載されている有効な治療方法ですが残念ながら現段階では健康保険適応外となり自費での治療となります。

・水いぼ(伝染性軟属腫:でんせんせいなんぞくしゅ)
 2歳から12歳ぐらいの子供に見られる1-5mm程度の表面がツルツルして光沢があり中央がおへそのようにくぼんだ形のイボです。保育園などの集団生活や水遊び・タオルの共有・浴場などで肌と肌がこすれあうことにより感染することがあります。通常、痛みやかゆみはありませんが、掻いて炎症を起こすとかゆくなったり、細菌感染を起こしてとびひとなることがあります。治療は、ピンセットで取り除くのが最も確実な方法ですが痛みを伴うのが難点です。
 痛みを軽減するために局所麻酔剤入りのテープを使用する場合もあります。テープを使用し何とか治療が可能となっても、数が多くなるとやはり治療に伴う痛みが障害となってきます。確実性は劣りますがヨクイニンの内服を行う場合もあります。

・脂漏性角化症(老人性イボ)
 紫外線や加齢によって発生する皮膚の良性腫瘍で老化によるイボです。茶色から黒色に盛り上がり表面がカサカサした形状です。中高年の顔や首など日の当たる場所に発生することが多いです。
 一見すると濃いシミのようにも見えるため、シミを気にして来院し実際は、このイボであることもあります。大きさや部位によって手術、凍結療法などの治療が行われます。多くの場合は、麻酔を必要とせず簡便な液体窒素による凍結療法を行います。一度で全部とれることは少なく通常複数回の通院で処置をする事となります。

円形脱毛症

 ストレス、風邪、睡眠不足、過度な疲労、胃腸炎、出産やケガなどをきっかけとして頭皮に「自己免疫反応(一説)」が起こり髪の毛が抜けます。各種自己免疫疾患や甲状腺疾患、アトピー性疾患を持病に持つ方や急激に女性ホルモンの減少する産後に発症頻度が増える傾向があります。
 症状は、硬貨のような小さな円形の脱毛範囲が1か所だけといった軽症の場合から頭髪がすべて抜け、さらに眉毛やわき毛などの体毛までもすべて抜け落ちるような重症の場合もあります。発祥の初期では、脱毛部位が自分では見えないために気付きにくく、枕に付着した抜け毛の増加やブラッシングでの抜け毛がきっかけで気が付く場合があります。
 治療は、外用薬や内服、光線療法などを組み合わせて行います。当院では、塗り薬と漢方薬も含めた飲み薬、エキシマ光線による免疫抑制効果を期待した光線療法を実施して効果をあげております。
 治療期間は、軽症の場合でも3か月~6か月程度かかることもあり非常の根気がいる治療です。重症化すると完治には年単位で治療期間を要する場合もあります。早期に発見してできる限り早く治療を開始することが大切です。

蕁麻疹(じんましん)

 突然何の前触れもなく赤く腫れぷっくりと蚊に刺されたようなふくらみがたくさんできたり、ミミズ腫れのような症状が皮膚に出現したりする蕁麻疹は、かゆみを伴ってはいるものの、数時間かけて消失と出現を繰り返えす点が湿疹と異なる特徴です。
 原因は、食べ物やダニ、ホコリ、花粉などのアレルギーによるものとそれ以外の原因によるものがあります。アレルギー以外の原因としては熱い寒いなどの寒暖によるものや皮膚を引っ搔くといった機械的刺激や、心身のストレス、運動や精神的な緊張による発汗でも発症することがあります。特定のものを食べて数分から一時間程度で起こる原因の分かりやすいケースもありますが、ほとんどの場合において原因がはっきりしません。いずれの場合も蕁麻疹の発生には、ヒスタミンという物質がかかわっているためにヒスタミンを抑える薬の服用などにより治療します。

帯状疱疹(たいじょうほうしん)

 幼少期にかかった水ぼうそうのウイルスは、成人になっても体内の神経節に潜伏しています。このウィルスが加齢やストレス、過労などによる免疫力低下をきっかけに再び活動を始め、神経を伝わり皮膚に到達することで発症します。体の左右どちらかに痛みを伴う赤い斑点と水ぶくれが多数集まって帯状(おびじょう)に集まった様子からこの名前が付いています。多くは胸から背中にかけて発症しますが、目の周りなど顔面にも好発します。
 治療は、ウイルスの増殖を抑える抗ウイルス薬を内服します。ウィルスの増殖が進む前のなるべく早期に治療を開始できれば効果が高まります。また、痛みを緩和する鎮痛剤や神経の回復を助けるビタミン剤を内服することもあります。3~4週間ほどで治癒しますが、約20%の方に3か月以上痛みが続く帯状疱疹後神経痛が起こるとされています。また、顔面神経麻痺や耳鳴りや難聴、めまい、視力の低下など重大な後遺症を引き起こすこともあります。
 日本人の成人90%にこのウィルスは潜んでいて、80歳までにおよそ3分の1の方が発症するとされています。発生しやすい要因の一つに加齢がありますので、予防には50歳以上の方を対象にワクチンの予防接種が行われています。予防接種は帯状疱疹を完全に防ぐものではありませんが、たとえ発症しても症状が軽くすむという報告があります。
 ワクチン接種について桶川市の方であれば1回4000円の助成制度があります。お住まいの地区によって助成制度の有無や内容が異なりますので住民票の有る市町村にお問い合わせください。

乾癬(かんせん)

 くっきりと盛り上がった赤い発疹の上に、銀白色のフケのようなもの付いた皮膚炎が典型的な皮膚症状です。慢性的に推移することが多い病気で、肘や膝からすねにかけて、頭髪の生え際などの部位に症状が出やすくお尻や爪にも症状がみられる場合があります。かゆみがある場合も無い場合もあります。
 原因には遺伝要素、環境因子、免疫学的要因が関わっていると推定されており、接触などで他人にうつるような病気ではありません。
皮膚症状以外では、関節が痛くなることがあります。治療は、塗り薬が基本で、それに飲み薬やエキシマ光線を使用した光線療法を組み合わせた治療を行います。

掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)

 手のひらと足の裏などに多発する水疱が主症状です。できはじめにかゆみを伴う事が多く、爪が変形したり、皮膚症状以外にも関節の痛みが出現したりする場合もあります。
 かゆみや水疱その他の症状より自己診断で水虫と勘違いし市販薬で悪化させている方もおられます。水虫とは異なり水疱からの浸出液には細菌や真菌、ウイルスなどの病原体は見られませんので他人に感染させるということはありません。
 はっきりと原因が分かってはいませんが、喫煙や扁桃炎や歯周炎などの慢性的な炎症、歯の詰め物などの金属によるアレルギーが関与していると言われています。
 塗り薬や飲み薬やエキシマ光線を使用した光線療法などの治療を行いますが、禁煙など関与していると思われる因子を取り除くことも大切です。

アトピー性皮膚炎

 良くなったり悪くなったりを繰り返すかゆみを伴った皮膚炎で多くの場合アトピー要因を持つ場合が多い皮膚疾患です。アトピー要因とはアレルギーを起こしやすい体質のことです。皮膚のバリア機能が落ちておりアレルギーを起こしやすい体質とアレルギーを起こす原因物質への接触や機械的刺激、体調などにより症状が強くなったり弱くなったりします。単にアレルギーの原因物質だけでなく体質や環境、精神状態や体調など複合的な原因で症状の強弱が起こるということが特徴です。
 このことより、アレルギーの原因物質への接触を見直すような生活環境や習慣の改善と同時に保湿などのスキンケア、規則正しい生活を心がけるなどの体調管理、医療機関での治療を複合的に行うことで改善に向けて取り組みます。
 医療機関では、アレルギーを起こす原因物質の特定や生活評価による生活指導、ステロイド剤やアレルギーの免疫反応を抑える抗炎症剤、JAKと言われる酵素の働きを阻害し炎症を抑える薬など各種炎症作用のある薬の外用や内服を中心に治療を行います。また、これらの治療を行っても十分な改善効果が見られない重症例について、当院ではエキシマ光線による免疫抑制効果を利用した光線治療を行っております。
 2018年から、15歳以上のアトピー性皮膚炎で特定の治療を継続しても効果が不十分な方に対してデュピクセントというアトピー性皮膚炎の皮疹やかゆみの原因をブロックする注射薬が保険適応の治療薬となりました。保険適応とはなりますが、3割負担で注射1本約2万円と非常に高価です。初回は、検査と2本の注射が必要ですので、薬代を含めて3割負担で約5万円、以降は2週間に1度の1本の注射(約2万円)を定期的に行います。慣れれば注射のたびに医療機関を受診しなくても自宅で自己注射することもできるようになります。
 非常に高額な医薬品を使用した治療となり自己負担が大変ですが、高い効果と安全性が期待できる最新の治療です。当院でも行っておりますので重度のアトピー性皮膚炎で悩まれている方はご相談ください。医療費については自治体の助成制度や健康保険の高額療養費制度の適応となり自己負担が軽減される場合があります。お住いの自治体や健康保険などによって異なりますので、市町村の国保や健康保険組合などの保険者にお尋ねください。

火傷

 やけどには3段階の症状があり、1段階目の軽度であれば、皮膚の表面が赤くなってヒリヒリする程度で水ぶくれはできません。しかし、2段階目以上の中~重傷になると、強い痛みと共に水ぶくれが生じることがあります。
 火傷の範囲が広範囲の場合や程度がひどい場合、ひりひりとした痛みが長く続く場合、水ぶくれができてしまった場合などは医療機関を受診しましょう。
 早めの処置が、治癒を長引かせず跡を残さないためにとても大切です。水ぶくれができてしまった場合は、自分の判断でつぶさずそのままの状態で受診するようにしてください。
 火傷をしてしまった直後は、流水やシャワーで冷やしてください、流水やシャワーを掛けることができない部位は氷水で冷やしたタオル、保冷剤や氷を包んだ冷たいタオルを こまめに替え冷やします。また、やけどの痛みに対しても効果があります。

口唇ヘルペス

 口唇ヘルペスは、くちびるやその周りに小さな水ぶくれができる感染性の病気です。
 「単純ヘルペスウイルス1型」(HSV-1)というウイルスが原因となって起こります。多くの場合、このウイルスは幼少期に感染しその時は無症状のことが多いですが、その後ずっと体内に潜伏し過労や風邪などで体力や抵抗力が落ちた際に唇の周りや鼻、頬、目の周りなどの部位に軽い痛みや違和感を伴った水疱を形成します。通常は1~2週間程度でかさぶたとなり治癒します。再発することもたびたび見られます。水疱から出る浸出液にはウイルスがたくさん潜んでいます。こうして手や食器、タオルなどに付着し、他の人にうつる可能性があるため、食器やタオルは共用せず、使用後は洗剤を用いて十分に洗うことで感染が防げます。手指もこまめな手洗いや消毒を行い清潔に保つことが大切です。
 治療は、抗ウイルス薬と呼ばれる種類の外用薬や内服薬でウィルスの増殖を抑えることで治療します。ストレスや発熱、風邪、過労、日焼けなどで体力や抵抗力が下がったときに再発することが多いため、日頃から適切に休養をとり、規則正しい生活、バランスのよい食生活を心がけることが予防につながります。

多汗症

 通常の温度調節や精神的な不安による発汗以外で生活に支障をきたす異常な発汗が起きる疾病です。全身的な発汗をきたす場合と手のひらや足の裏、脇の下など体の一部分の発汗をきたす場合がありますが、そのほとんどは後者の症状です。
 原因が、特定できる場合とできない場合に分けられ、特定できる原因としては、甲状腺機能の異常などの内分泌代謝疾患、悪性腫瘍や糖尿病などによる神経障害、パーキンソン病などの神経変性疾患、精神的な緊張、薬物によるものなどが挙げられます。これらの場合は原因疾患の治療が必要となります。これら原因疾患の治療以外では、副交感神経の活動を抑制する作用を持つ外用薬、内服を行い治療します。部位や症状によっては保険適応にならない場合があります。

汗疱(かんぽう)

 何らかの原因で汗の管が詰まり汗が皮膚の中に詰まってしまうことが原因と言われています。ほかにも、自律神経の失調やストレス、金属アレルギー、アトピー性皮膚炎と関係があるともいわれています。普段から手のひらに汗をかきやすい人が発症しやすく季節の変わり目に発症しやすい傾向があります。
 手のひらや足の裏、手足の指にかゆみを伴う1~2㎜の小さな水疱ができ、さらに水ぶくれが破れて皮膚が炎症をおこすと、汗疱性湿疹となり、強いかゆみを感じます。真菌や細菌によるものではないので、他人に感染させる心配はありませんが、一見して水虫と判別しづらい場合がありますので皮膚科では顕微鏡による真菌検査をする場合があります。治療は外用薬や内服で治療を行います。

蜂窩織炎

 皮下脂肪組織から皮膚の深い箇所での細菌感染による化膿性感染症です。皮膚炎などによるひっかき傷や、外傷、熱傷、白癬感染(水虫)などの皮膚の損傷から侵入した細菌が感染源となる場合が多いですが、全く感染源が特定されないこともあります。糖尿病やステロイド治療などで免疫力が低下した状態で感染を起こすと重症化することがあります。
 下肢の異常なむくみがある方も蜂窩織炎になりやすいとされています。
 感染を起こすとその部位は熱をもって腫れ痛みます。全身の発熱や悪寒を持つような症状も重症化するとみられます。
 治療は、感染源となっている細菌に対する抗菌剤の内服や点滴を行います。局所的に膿が溜まっているような症状が有れば切開して膿をだすこともあります。稀ではありますが、死に至るような合併症を引き起こすこともあり注意が必要です。原因となった皮膚炎や水虫、糖尿病の治療なども並行して行う必要があり、このことは再発予防の為にも重要です。

粉瘤

 皮膚にできた良性腫瘍でよく脂肪の塊と言われていますが、実際のところ内部には垢が溜まっています。内部が細菌感染をおこし真っ赤に腫れ痛みを生じた状態で来院されることもあります。
 感染を起こしている場合は、必要に応じて内部の膿を取り除き、洗浄や抗菌剤、痛み止めなどの内服、抗菌剤の外用で炎症を鎮めます。繰り返し炎症を起こす場合があるので早めの受診が大切です。

ホクロ

 ホクロは、皮膚や髪の毛の色素であるメラニン色素を作る細胞が集まってできています。黒いイメージがあるかもしれませんが褐色や茶色のものもあります。形状は、平らな物からデコボコと盛り上がった物まであり、先天的な物もあれば成長するにしたがって現れる物もあります。このように一口にホクロと言っても様々なタイプがあることと、近年は手軽に健康情報が入手できることにより、ホクロとよく似た病気を心配されて来院される方がいらっしゃいます。
 ホクロとよく似た病気には、老人性疣贅(ゆうぜい)、基底細胞ガン、悪性黒色腫などがあります。大きさが6mmを超えるものや、左右対称でないもの、境界部分がぼやけているもの、色が極端に濃いものや濃淡の目立つものについては、注意が必要ですので早めの受診をお勧めします。

顔や手足のケガ

 転んだ拍子に顔や腕を擦りむいたり、物に当たって皮膚を含めた組織が引き裂かれたり、刃物などの鋭利なもので切れた、細長いもので突き刺さるなどしてできた様々な外傷(ケガ)があります。
 どのケガもすぐに流水で洗い流し傷口を清潔にした状態で、可能な限り早期に医療機関を受診することがきれいな治癒や治癒までの期間の短縮のためには重要なことです。

褥瘡(床擦れ)

 同一部位の皮膚が外部から長時間圧迫を受け血流が悪くなった部位が赤くなったりただれたり傷になることがあります。これが褥瘡です。長時間おなじ姿勢で横になることで体重によって圧迫され発症するのが典型的なパターンです。栄養状態が悪い方や心肺機能が落ちている方、糖尿病の基礎疾患のある方は特にできやすいとされています。
 治療は、塗り薬や傷を保護するフィルムなどで行います。このような治療と併用して褥瘡発生の原因となった長時間の圧迫を避けることや傷を清潔に保つこと、栄養状態や基礎疾患の管理を総合的に行う事が非常に重要です。

ケロイド、傷跡

 ケガや手術、ニキビなどの傷が治った際に、赤くミミズ腫れのように盛り上がった傷跡が残ることを肥厚性瘢痕(ひこうせいはんこん)と言います。お腹や胸の手術の傷や関節など皮膚が引っ張られて伸び縮みする部位や深い傷などはこの傷跡が残りやすいです。かゆみや痛みが生じるだけでなく、炎症が落ち着き一定期間を経過後に平坦化しても正常な質感の皮膚とはならず場所によっては目立ちます。
 また、炎症が非常に強い傷跡でケロイドと言われるものとなると非常に治りにくく傷跡も汚くなりがちです。発症には肥厚性瘢痕と異なり「ケロイド体質」が大きく関与しています。胸や肩などが好発部位です。ピアスの傷やニキビのような小さな傷でもケロイドを起こすことがあります。
 治療は、テープや軟膏、飲み薬などの薬物療法があります。

うおのめ(鶏眼)、タコ(胼胝)

 魚の目もタコも皮膚の角質層が厚くなり表面が固く変化したものです。正常な皮膚が、加わった外力に対して反応し、厚くなったり皮膚が押し寄せられたりしてできます。魚の目はその中央に固い芯を伴います。好発部位は足底です。立ち仕事をしたり歩いたりする際に芯による刺激で痛みます。タコの場合は芯がないために患部を圧迫されても痛みはありません。
 外力が原因なので、一旦取り除いても同様の外力がかかり続ければまた再発するということも珍しくありません。特に痛みを伴う魚の目は、靴の見直しによる外力の軽減が効果的な事が多く、足に合わない靴、ハイヒールなど先端の細い靴や足幅の狭い靴を避けることやクッション性の高い中敷き(インソール)を使用することで改善や再発の防止が期待できます。

虫刺され

 昆虫に咬まれたり毛虫の毒毛に接触したり体液に触れたり、吸血されるなどで起こる皮膚炎です。炎症の強さにより症状が広がったり跡が残ったりすることもあります。様々な昆虫により起こりますが、代表的な症状は痛みや腫れ、かゆみ、アレルギーなどです。
 一般的な症状のかゆみや局所の痛みには、副腎皮質ホルモンの外用や抗アレルギー剤の内服で治療を行います。